親にとって子どもが食事を”食べる””食べない”ですごく悩まれることだと思います。
きちんとした栄養バランスで、食事量をしっかり食べてほしいと思いつつ、偏食のお子さんはどうしても食べるもの、食生活が偏ってしまいます。
「偏食」と「好き嫌い」は異なります。
「好き嫌い」は口に入れて、食べてみて味覚を感じて判断するものです。
「偏食」は見た目で食べない、かなり限定的な条件(特定のメーカーの食パン等)であれば食べるといった食べるものが特定の物に限定されている状況を指します。
今回は偏食の原因として考えられることと、そのための改善策についてです。
【結論】
・偏食の原因はモノの捉え方の特徴が影響する
<体が取り込む感覚情報が限定的>
<遊び方からわかる偏食の原因>
・遊びが変わることで偏食が改善される
<全身を使って体の感覚情報をふんだんに取り込める遊ぶが最適>
<遊びのバリエーションを増やそう>
重い偏食のあるお子さんは行動や物の捉え方にも特徴があります。
これがすべての原因ではありません。
偏食には人的要因、環境的要因、お子さんの身体の要因等たくさんの背景があります。
これからご紹介する視点も偏食の一つの背景として考えていただければと思います。
【解説】
・偏食の原因はモノの捉え方の特徴が影響する
<体が取り込む感覚情報が限定的>
「偏食」のお子さんは見た目で口に入れることを拒んでしまいます。
その背景には食べ物から読み取れる感覚情報の少なさがあると思われます。
私たちは自分・環境・物を知るために、身体で感じる感覚を基にしています。
体で感じる情報とは
・視覚:見るための情報
・聴覚:聞こえる情報
・触覚:触った感じのザラザラ、ふわふわ等の情報
・固有受容感覚:重さや固さなどの目に見えない情報
・前庭感覚:傾き、スピード感、動きを感じる情報
詳しくは下の記事で紹介しています。
具体的には「リンゴ」を見た時にどんなことを想像しますか?
実は5つの間隔を全開に働かせて「リンゴ」というものを認識しています。
沢山の経験から全ての感覚をつなげて「リンゴ」の情報を整理し蓄積しています。
この5つの感覚の取り込み方に差があるとどうなってしまうのか…
例えば視覚情報を重要視するお子さんは…
リンゴ=皮をむいてカットしてある物だけ
このように捉え方が偏ってしまいます。
そのためお子さんにとってはリンゴの味が好きでも
”丸ごとでは食べない”
”ウサギカットにすると食べない”
”アップルパイはリンゴではない”
等の認識となってしまいます。
その結果、見た目で口をつけないといったことが起こります。
<遊び方からわかる偏食の原因>
こういった感覚情報の捉え方の特徴は遊び方にも現れます。
例えば
ボール=投げるもの
積み木=積むもの
と決めてしまっていませんか?
これ以外の遊び方が少ないのであれば「一つの玩具を一つの遊び方」でしか遊ばないため、遊びが広がりにくい可能性があります。
本当はボールといってもたくさんの遊び方があります。
なげる、転がす、並べる、落とす、叩く、なめる、のる、見る、眺める、持ち運ぶといったたくさんの遊びの可能性を秘めています。
もしかしたら大人からすると正しい遊び方ではないと思う方もいるかもしれませんが、お子さんからしたらどれも立派な遊びです。
そしていろんな遊び方を展開するためには5つの感覚情報がしっかり取り込めているかが重要です。
それぞれの感覚情報に基づいた遊び方が生まれるのです。
・遊びが変わることで偏食が改善される
<全身を使って体の感覚情報をふんだんに取り込める遊ぶが最適>
・公園遊び(ブランコ、滑り台、砂場)
一つ一つの遊びを作業療法士の視点から分析してみると…
ブランコ | 全身が揺らされる前庭感覚を感じながら
落ちないようにバーをしっかり握りつづける お尻がブランコの板からずれていないか 確認するための固有受容覚センサーが働いています。 |
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滑り台 | 階段上りで体で踏ん張る
次の段へ移るときの重心の移動(固有受容感覚)を感じつつ 滑り降りる時には座った姿勢を保ち続ける バランス(前庭感覚)が養われます。 |
砂場 | さらさら、ドロドロなど質感を手で感じ(触覚)
団子や山を作る時には壊さないようにだけど ギュッと固めるための力のコントロール(固有受容感覚)が 発揮されます。 |
これはほんの一例にすぎません。
いろんな遊びを5つの感覚情報という視点で分析してみると他にも役立つ遊びはたくさんあると思います。
外遊びの重要性がわかりますね。
<遊びのバリエーションを増やそう>
お子さん一人ではなかなか遊びを広げられない場合も多いので、ここは大人の出番です。
大人の発想力が試されます。
一つの玩具で何通りもの遊び方を見せることがポイント
危険が無ければ何でも大丈夫です。
<考えるためのヒント>
動詞と使う身体の部位を考える
目 | 眺める、じっと見つめる、目の前に使づける、見ない、覗く |
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顔 | なめる、嗅ぐ、ほっぺにあてる、かむ、頭に乗せる |
手 | 待つ、運ぶ、投げる、触る、さする、叩く、押し潰す、挟む、積む |
体 | お腹に乗せる、上に乗る、ぶつかる、座る、貼り付ける |
足 | 蹴る、立って乗る、転がす、足で挟む、持って走る |
他にもたくさんあるので、いろいろ考えてみると面白いと思います。
これにモノを当てはめてみましょう
・コップ、ボール、積み木、ひも、ハンカチ、枕、毛布
・新聞紙、足台、椅子、鉛筆、絵本、ティッシュ
実際にコップでやってみましょう!
”目の前に使づける、見ない、覗く、なめる、嗅ぐ、ほっぺにあてる、待つ、運ぶ、投げる、叩く、押し潰す、お腹に乗せる、上に乗る、蹴る、転がす、持って走る”
いかがでしたか?
どのモノに対しても、どの遊び方もある程度当てはまるのではないでしょうか。
本当に遊びと呼べるのか!と疑問に思うかもしれませんが
子どもにとっては立派な遊びです!
一つの物から連想できる遊びが増えるということはそれだけ5つの感覚情報をフル活用しているという証拠です。
【まとめ】
偏食を食事の場面だけでどうにかしようとすると
食べさせようとする大人も、食べさせられる子どももうんざりですよね。
本来楽しく会ってほしい食卓が台無しです。
遊びの場面から育んでいきましょう。
食事では食べられるもの、楽しく食べられるものを基本に、時々チャレンジできそうなものを取り入れてみましょう。
遊びが広がり、モノの捉え方が広がってくると、ペロッと味見をしてくれる日が来るかも!?
一口目が大きな壁です。
この一口がチャレンジできれば、あとは味覚による好き嫌いの判断に入ります。
偏食のハードルを一歩クリアです!
ぜひ参考になれば嬉しいです。