感覚統合という言葉を聞いたことがありますか?
何だかよく耳にするけど、よくわからない。
ブランコとかトランポリンをやればいいんだよね?
何だか”感覚統合”という言葉だけが世の中を飛び交っているように感じています。
感覚統合とは
「人間が自分の身体や環境から感覚を整える神経学的過程で、環境の中で身体を有効に使うのを可能にする」
ことであります。(1972)
…この文章を読んでもすぐに理解することは難しいと思います。
出来るだけ要点を絞って解説して行きたいと思います。
【結論】
簡単に説明すると
「自分が置かれている状況・環境を把握して、適切なふるまい、行動ができること」
”置かれている状況・環境”を捉えて行動に移すためには体で感じている感覚情報がとても大切になってきます。
感覚統合理論では子どもにとって「楽しい」と思えることを重視しています。
感覚統合の大原則
①感覚は脳の栄養素である
②感覚入力には交通整理が必要である
③感覚統合は積み木を積み上げるように発達する
詳しく説明していきます。
【解説】
1.感覚統合の成り立ち
米国の作業療法士エアーズ博士は人間の発達や行動を脳における感覚情報の統合という視点からとらえた感覚統合理論を作りました。
感覚統合理論は子どもの発達、行動、学習を支援する上で大切な視点を与えてくれます。
例えば…学習に関しては学習の苦手なお子さんがなぞり書きや音読と何度も繰り返して練習しても上達が見られない様子が良くあります。
学校で行われるような表面的な練習だけでは解決できない背景の要因(脳の働き)があるのではないかと考えたようです。
”脳”が発達する大前提として子どもも大人も”楽しい活動””ちょうど良いチャレンジとなる活動”に取り組み”成功した時の達成感”が得られることが重要であると言われています。
感覚統合の大原則
①感覚は脳の栄養素である
私たちはたくさんの感覚を取り込んで生活をしています。
5感と呼ばれている視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚はなじみのあるかと思います。
これ以外に
前庭感覚:身体の傾きや動きを感じる
固有受容感覚:筋肉や関節の状態を感じる
があります。
詳しくは下記の記事をご参照ください。
これらの感覚情報を脳は受け取って、身体がどのように行動すればよいのか指令を出します。集中力や注意力にも影響します。
そのため脳にとても重要な栄養素です。
エアーズ博士は中でも触覚、前庭感覚、固有受容感覚の重要性を強調しています。
②感覚入力には交通整理が必要である
同じ感覚刺激でも感じ方は人それぞれです。
感じ方は体調や脳に目覚め度合いなどで変動します。
個人の中でも感覚の種類によって感じ方は異なります。
感覚統合がスムーズに行われている時
→心地良い・快感・楽しい・達成感
感覚統合に問題がある時
→気持ち悪い、嫌い、おもしろくない、すまんない、あーあ失敗しちゃった
③感覚統合は積み木を積み上げるように発達する
人がいろいろなことを習得していくためには順番があります。
普段行う活動の中には背景となる力がたくさん存在します。
例えば…
①滑り台を滑る
→手すりを持った時の固い感覚(触覚)
上るために踏ん張る身体の力(固有受容感覚)
登ったときに高さを感じる(視覚)
滑ったときに体が倒れないようにするバランス(前庭感覚)
瞬時にたくさんの感覚情報を取り込んで整理しています。
これらの土台がしっかりあることで何度も繰り返し滑ったり、お友達と一緒に滑ったり、寝っ転がって滑ってみたりと遊び方のバリエーションが広がっていきます。
学習になるとより複雑になっていきます。
②黒板を写す
→教室にたくさんの物がある中で黒板をに注目する(視覚)
椅子に座って姿勢を長時間保つ(姿勢保持:固有受容感覚、前庭感覚)
鉛筆をもって黒板を見て書き写す(眼球運動、細かい手の操作)
書きながら先生が話していることにも注意を配る(二つの課題を一緒に行う、聴覚)
一部だけですが、同時に、そして瞬時にたくさんの感覚情報を整理して環境に適した行動をとることが出来ています。
最も重要であるピラミッドの土台の部分が視覚、前庭感覚、固有受容感覚、触覚、聴覚となります。
簡単ですが、感覚統合について解説してみました。
繰り返しになりますが、脳の発達のためには「楽しい」と思えることが最優先です。
特殊な遊具でなくっても、自然の中の遊び、外遊び、家庭での遊びに感覚統合の考え方を取り入れることが出来ます。
ぜひ参考になれば嬉しいです。